岡浩駐トルコ日本大使の離任メッセージ
平成29年7月3日

大使館ホームページをご訪問いただきましたことにお礼申し上げます。
この度、7月上旬をもってトルコから日本に戻ることになりました。昨年4月の赴任以来約1年3カ月の短いトルコ勤務となりましたが、親日的な国で勤務できましたことは大変幸運なことでした。この間、多くのトルコの方々と知り合うことができ、また、トルコで日本との懸け橋として活躍する多くの日本の方にも接する機会を得ました。トルコ滞在中に知り合ったトルコ人とトルコ在住日本人の皆様に、これまでの大使館活動へのご支援と激励に対して感謝申し上げます。
在任中、二国間関係が着実に前進しましたことを大変嬉しく思います。昨年9月の国連総会の機会に安倍総理とエルドアン大統領の会談が行われました。これは2015年にトルコと日本で行われた2回の首脳会談に続くもので、二国間関係をあらゆる分野で強化していくことに合意しました。また、トルコ外相の公式訪日としては14年ぶりとなるチャヴシュオール外相の訪日も実現し(本年6月)、「戦略的パートナーシップ」を一層強化することに合意しました。ビジネス・経済の分野では、日本企業が手掛けたトルコで一番長い橋となる「オスマンガーズィ大橋」が完成(昨年6月)し、また、トヨタが最新鋭のハイブリッドSUV車を世界の工場に先駆けてトルコで生産を開始しました(昨年11月)。
昨年の赴任に先立ち、2月・3月とアンカラでテロが起きましたので、赴任に際しては在留邦人の安全を最重要に心がけてまいりました。幸い、トルコ関係当局の取り組みのおかげで、トルコの治安が改善基調にあることを大変喜ばしく思います。このことは、本年4月のトルコへの海外各国からの旅行客が久しぶりに前年度の数字を上回ったことにも表れています。トルコの魅力にできるだけ多くの日本の方々が接することになることを願ってやみません。
昨年7月のクーデター未遂に際し、自らの生命の危険に晒しながら民主主義を守ったトルコ国民の勇気に改めて敬意を表します。そして日本・トルコ関係がクーデター未遂事件にも影響されず強化されていることも嬉しく思います。クーデター直後に鶴保内閣府大臣がトルコの民主主義を支持する安倍総理の親書をもってトルコを訪問されました(昨年9月)。また、本年1月にも石井国土交通大臣が安倍総理の親書を携行してエルドアン大統領を表敬訪問しました。また、昨年の日本からトルコへの直接投資は一昨年と比べて増加し、国別ランキングでも13位から9位に上昇、アジアで最大の投資国となりました。さらに、本年1-3月期では日本は第6位に上昇しています。外務省の海外進出日系企業実態調査によれば、在トルコ日系企業数も昨年1年間で138社から188社へと50社も増加しました。これは日本のビジネスが一貫してトルコを重視していることの証拠であり、引き続き日本とトルコのビジネス関係が順調に拡大することを願っています。
トルコの若者の間で日本に興味を持っておられる方が大勢おられることに勇気づけられています。例えば、現在トルコでは中東地域で最も多くの方が日本語を学ばれていて、卒業生の中には日系企業に就職・活躍されておられる方もいます。日本に関心を持つトルコの若者は、将来の日本・トルコ関係を担う大事な世代であり、大使館としてもトルコ人の日本語学習者を積極的に支援しています。こうした観点から開催した日本語学習者とトルコ在住日本人との懇親会(昨年10月)では、大学の新入生が学んだばかりの日本語を使って話そうとしている姿に感動しました。この他、日本の伝統スポーツである柔道・空手・合気道が、これまでの日本からの指導者の教えを受け継いでトルコ社会に広がっていることも新鮮な驚きでした。2020年の東京オリンピック開催に向けてスポーツの面でも交流が深まることを願ってやみません。
数え上げればきりがありませんが、100年を超える長い日本とトルコの友好関係に1ページでも新しい絆を付け加えることに貢献できたとすれば大変光栄です。特にサドクラル博士が理事長を務められる「土日基金」には、両国間の交流の拠点として大変お世話になりました。ここに深堪なる敬意と謝意を表します。
皆様のご多幸と日本・トルコ友好関係の末永い発展を願っております。
2017年7月
駐トルコ共和国日本国特命全権大使
岡 浩
駐トルコ共和国日本国特命全権大使
岡 浩